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予備試験刑法平成29年

 令和5年度のような多論点型の問題でした。多論点型の問題は予備試験受験生が苦手にしている傾向があるため、論点を落とさず網羅的に検討できているだけで比較的上位答案になったものと考えられます。特に多くの人が陥りがちなのですが、あまり得点のないであろう論点、本問であれば、業務上過失致死罪の論点に多くの記載を割かないことが肝要であろうかと思います。本問で核となる部分は不能犯、離隔犯における実行の着手、因果関係の記載でしょうから、乙の罪責から検討するにしても、これらの認定に行数を割く必要性が存在したのであろうかと思います。

 

①甲の罪責

・殺人未遂罪(間接正犯)

不能犯の検討

→実行の着手の有無の検討

殺人罪(間接正犯)

→因果関係の検討

→因果関係の錯誤の検討

 

 比較的拾う事情は明記されているため、丁寧な理論面の説明が必要でした。特に不能犯においては、一般人が認識し得た事情及び行為者が認識していた事実を基礎として一般人の見地から、危険性の有無を判断するという規範を明示する事(もちろん説対立もありますが、、、)とその規範を導くうえで、未遂犯と不能犯は構成要件レベルの問題であり、かつ構成要件は規範であることから、一般人の見地からの判断が必要となる。また、行為は主観と客観の統合ゆえに基礎事情としては一般人の見地から認識し得た事情のみならず、行為者が特に認識していた事情も含めるべきとの説明も必要でした。

 

②乙の罪責

・業務上過失致死罪

・虚偽診断書作成罪、同行使罪

・証拠偽造罪

・犯人隠避罪

 

 まず、業務上過失致死罪の検討についてですが、本文中に刑法上の過失が存在したとの記載が存在しましたが、これは過失致死罪の検討を大展開してはならないとの司法試験委員のメッセージではないでしょうか。そこで、本問においては業務上過失致死罪の検討においては「過失」が注意義務違反であることを明示したうえで注意義務違反としての過失が存在するくらいの記載が存在するくらいの記載で足りると思われます。

 証拠偽造罪では、虚偽診断書を作成することは、自らの過失致死罪を隠すことにもなりますから、証拠偽造罪の成立が問題になりますが、共犯者の証拠を偽造する場合にも同罪が成立するのが判例の結論ですから、これを肯定します。

 ほかの要件についてはそこまでの深い検討は要求されないものと思います。しかしながら、規範を明示したうえで当てはめをする(最低限当てはめの中で規範を書く)という姿勢は忘れない方がよいものと思われます。

 

 

 本問は予備試験令和5年のような問題で、以下に論点を落とさないかの勝負であったと思います。(遅すぎた構成要件の実現をなぜかかけなかったトラウマが思い起こされます)とにかくこのような問題の対処法としては使用した事情に線を引くことです。そうすると、3mlしか注射できなかった事情も何かに使用するのだということがわかり、事情を落とすことが少なくなります。

 

 次は平成30年刑法です。頑張りましょう!